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酸度とは、日本酒に含まれる酸の量
酸度とは、日本酒に含まれている酸の総量を示す指標です。
日本酒に含まれる酸は、70%がモロミ中に酵母が生成するもので、20%が酒母から、蒸米と麹に由来する酸が10%といわれています。
主要な酸としては、コハク酸・リンゴ酸・乳酸があげられます。ついで、酢酸・クエン酸です。
コハク酸・リンゴ酸・乳酸は、モロミ中に多く生成される酸です。酒母では酢酸・コハク酸が多く生成されます。
酸度の測定
- 清酒10mlに、プロモチモールブルーとニュートラルレッドの混合指示薬を数滴加えます。
- 清酒10mlが、赤色になります。
- そこに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を一滴ずつ入れていきます。
- 検体が赤色から淡緑色になったら中和されたという合図。
- 中和するために、加えた水酸化ナトリウムのmlの数値を酸度とします。
日本酒に含まれる主な酸の種類
コハク酸
コハク酸は、貝類に含まれる旨味成分です。
日本酒においても旨味に寄与しますが、多量に含まれるとエグミに感じられます。
また、コハク酸は人肌かぬる燗をするとまろやかになり、おいしく感じられます。
低温では苦味が出てきます。熱燗では、苦味や渋みがわずかに出てきます。
リンゴ酸
リンゴ酸は、リンゴ・ザクロ・サクランボ・ブドウなどに含まれる果実的な爽やかな酸です。シャーベットやゼリーやジュースなどフルーツフレーバーの加工食品に、酸味料として使われます。
ワインに多く含まれる酸でもありますが、その大半はブドウ果実に含まれているものであるのに対して、日本酒に含まれるリンゴ酸は酵母が生成します。お酒に爽やかなキレを与えます。多すぎると酸味が刺激になります。
冷やして、爽やかな酸味が際立ちます。
クエン酸
クエン酸は、レモン・グレープフルーツ・梅干に含まれる酸です。こちらもリンゴ酸と同じで爽やかな酸味なので、食品添加物として利用されています。
お酒に爽やかな酸味を与えます。冷やすと、よりおいしく感じられるようです。
近年、女性や若年層向けに、低アルコール清酒や発泡性清酒といったライトタイプの清酒が開発されています。
これらの清酒には糖類が多く残っているため、クエン酸やリンゴ酸のような爽やか系の酸を多く生成する麹菌や酵母を使用することで、甘さと酸味のバランスをとっています。
クエン酸を多く生成する麹菌としては、焼酎に使われる黒麹菌や白麹菌、リンゴ酸を多く生成する酵母としては、協会28号、77号などのリンゴ酸高生成酵母があげられます。
乳酸
日本酒の酒母造りで雑菌淘汰に欠かせないのが乳酸です。
低温では刺激が強いギスギスした酸味が出ますが、温度を上げることでまろやかにまとまります。
というわけで、乳酸を多く含む「生酛」「山廃酛」のお酒はぬる燗がお勧めです。
酸が味覚に与える影響
このように、酸が多いか少ないか、あるいは、どの酸が多いか少ないかによって、そのお酒の旨味・キレ・メリハリなどに影響を与えます。
また、人の味覚では、酸が多いと辛口に感じ、酸が少ないと甘口に感じます。
さらに、温度によって感じ方も大きくかわります。
主要な酸の温度別官能評価の結果を引用します。
アミノ酸度とは、日本酒に含まれるアミノ酸の量
日本酒の裏ラベルに記載されている「アミノ酸度」は、読んで字の如く、日本酒に含まれているアミノ酸の総量を示す指標です。日本酒に含まれるアミノ酸は、約20種類あります。
主なアミノ酸は、グルタミン酸、プロリン、アラニン、バリン、アルギニン。
グルタミン酸
グルタミン酸には、免疫力を高める働きがあります。また、神経伝達物質でもあり、脳の活性化に寄与します。
強い酸味と、中程度の旨味を持っています。
L-グルタミン酸ナトリウムになると強力な旨味を持ち、旨味調味料の主成分となります。また、グルタミン酸が5000個ぐらい繋がったものをポリグルタミン酸といいますが、これは納豆のネバネバ成分です。旨味を感じます。
プロリン
表皮細胞の増殖、コラーゲンの合成や修復、角質の保湿作用など、肌の若返り効果のあるアミノ酸です。また、脂肪分解酵素の活性化を図り、脂肪燃焼を促進する働きがあります。生体内でグルタミン酸から合成されます。
強い甘みと、強い苦味を持つアミノ酸です。
アラニン
しじみやあさりなどの貝類や、牛や豚のレバーに含まれるアミノ酸で、脂肪の燃焼を助ける働きや、肝臓の機能を活性化させる働きを持っています。
強い甘みと、若干の旨味を持っています。
バリン
アルギニンと同じく、疲労回復、疲労物質である乳酸を生成させないエネルギー燃焼を行うアミノ酸です。筋肉を修復する働きもあります。
レバーや子牛、チーズ、ピーナッツに含まれています。体内では生成されない、必須アミノ酸の一種です。
苦味と、若干の甘みを持っています。
アルギニン
成長ホルモンの分泌を盛んにする、筋肉を強くする、免疫力を高めるなどの働きを持つアミノ酸です。また、プロリンと同じくコラーゲンを構成しています。鶏肉や大豆に多く含まれます。
苦味と、若干の甘みを持っています。
アミノ酸が味覚に与える影響
アミノ酸が多く含まれているお酒は、旨味やコクが感じられます。多すぎると、濃すぎてくどく、飲み飽きするお酒に感じられます。
アミノ酸が少ないお酒は、あっさりとした薄味のお酒に感じられます。
アルコール度、日本酒度、酸度、アミノ酸度の4つの成分値の組み合わせで、味わいが決まってくるとはいうものの、酸やアミノ酸は、前述の通り何十種類もあるわけですから、結局のところ、飲まないとわかりません。