金滴酒造は、北海道樺戸郡新十津川町にある蔵元である。
札幌からだと石狩川と並行に北北東へ進む。旭川までのちょうど中間あたりが新十津川町だ。
東に流れる「石狩川」、そして西に聳える神山「ピンネシリ山」。今では穏やかな田園地帯といったところだが、、、
目次
新十津川の歴史
今から遡ること130年前のこと。奈良県十津川村は未曽有の大雨で大洪水に見舞われ、全村全滅という被害を被った。
このような事態に、当時学生であった西村直一氏らの若者が中心となって北海道への移住を勧誘。
その時の説得材料が面白い。それは、、、
「北方防衛の重任に当たることは、十津川郷士先祖代々の忠君愛国の精神にかなうものである」
だったらしい。
何故、このような理由で?とお思いになるだろうが、実は神武以来2000年以上の歴史において、十津川の民の天皇への忠誠心は他に類を見ないのだ。そしてそれが村民の誇りだったのだ。
例えば、、、
- 十津川村民は、初代神武天皇東征のおりに道案内をした八咫烏の末裔である。
- 10代崇神天皇によって玉置神社が創建された。
- 40代天武天皇の吉野挙兵時、十津川の村民も出陣。
- 96代後醍醐天皇が吉野で南朝を起した際も十津川部隊を頼りにした。
などなど。
十津川の村民は移住を決意し、ここ新十津川の地へ。開拓を進めていくことになる。
金滴酒造の創業
祝日以外は禁酒という掟を課し、苦労に苦労を重ねて開墾しつづけ16年。やっと禁酒を解くときがやってきたのである。
そこで、前述の西村直一さんはじめ9人が発起人となり、「自分たちの飲む酒を自分たちで作ろう」と組織したのが「金滴酒造」の前身であるところの「新十津川酒造株式会社」である。
以来、火災や戦争などの危機を乗り越え、1951年に金滴酒造と改名しつつ、北海道を代表する蔵元に発展してきた。
金滴酒造の特徴
仕込み水
増毛(ましけ)山地の主峰、暑寒別(しょかんべつ)岳を水源とする、清冽にして豊麗な雪清水が流れをつくる「徳富川」(とっぷがわ)の伏流水を浅井戸で摂取。
適度なミネラルを含む軟水であると聞く。
原料米
北海道産の酒造好適米や、新十津川産の「きたしずく」「吟風」を厳選して使用。
吟風(ぎんぷう)
八反錦ときららを親に持つ酒造好適米。
- 心白が大きくはっきりした、心白発現率の高い品種
- 芳醇な酒質となるのが特徴
北海道産酒造好適米の先駆け的存在である。
きたしずく
吟風の品種改良種。雄町の血筋も引く。
- 心白発現がよく、千粒重は重く多収。
- 雑味が少なく、やわらかい味の酒質となる
北海道で育てるとあって、耐冷性が高く、安定生産が可能となっている。
彗星(すいせい)
こちらも吟風の品種改良。
- タンパク含有量の低さが特徴。
- 淡麗な味わいのお酒が期待できます。
- 千粒重が重く大粒、収量性が高い。
技術
北海道の酒米は、その溶け方に特徴があるらしい。その特徴とは「後溶け」。
一般的に酒造りの教科書は山田錦での造りがモデルとなるのだが、道産米の場合はその造りではダメ。溶けて欲しいときに溶けず、後になって溶けだすからだとか。
その特徴を把握して活かす技術。それが北海道の地でいい酒を造るキーワードとなるような気がする。
主な商品紹介
金滴 純米吟醸酒
ワイン・アドヴォケート 2016年8月で、かのロバート・パーカー氏がこのように評価。
「お米を愛するものには、この日本酒は大変魅力的。米の香り漂うとともにピーチ、ストロベリー、チェリーのフルーティーな味わいを感じられる。口当たりにミネラル、柑橘、米の甘い香りが感じられ、ピリッとした風味のある味わいは北海道の長くて寒い冬、丁寧な長時間醗酵ならではの味。北海道地方の新鮮な海鮮との相性は抜群。」
引用元:Wine Advocate
豊かな旨味を持ち、さらりとした喉こしのやや辛口のお酒となっている。
原料米 吟風・空知産酒造好適米 | 日本酒度 +2 |
精米歩合 55% | 酸度 1.4 |
酵母(未公開) | アルコール度 15~16 |
金滴 新十津川
地元である新十津川産の酒造好適米「吟風」を使用した、吟醸造りの純米酒。米の旨みをしっかりと感じつつも、すっきりと切れのある喉越しが特徴である。
原料米 新十津川産「吟風」メイン | 日本酒度 +3 |
精米歩合 55% | 酸度 1.4 |
酵母(未公開) | アルコール度 15~16 |
金滴 純米吟醸 北の微笑
吟風と北海道空知産の酒造好適米を厳選して使用、丹念に精米し丹精込めて仕込んだ「純米吟醸 北の微笑」。豊醇でまろやかな味わい。
原料米 吟風・空知産酒造好適米 | 日本酒度 +2 |
精米歩合 55% | 酸度 1.4 |
酵母(未公開) | アルコール度 15~16 |