福司は北海道釧路市にある酒造メーカー。全国新酒鑑評会において入賞あるいは金賞を連続受賞するなど北海道を代表する酒蔵の一つである。
釧路は人口17万人。道東の政治経済の中心でありながら、釧路湿原国立公園と阿寒摩周国立公園の2つの国立公園を持つという手付かずの自然が残る魅力的な街だ。
そんな中、福司酒造は、地元の食材に合う・地元の人々に愛される酒を醸すことを第一義として日夜新しい酒造りに励んでいる。
福司酒造の歴史
梁瀬長太郎が、大正8年(1919)4月10日に酒類、清涼飲料、雑貨、食品などの卸売りを目的に合名会社敷島商会を創業したのが始まり。場所は釧路市米町2丁目。今よりもっと海側、釧路崎のあたりだった。
酒造りはというと、、、
その3年後の大正11年。2kmほど内陸部の住吉2丁目に酒蔵場が建造され、新潟の関原酒造の助けを得て(関原酒造によって?)敷島酒造が設立される。翌年の大正12年より醸造を開始した。
太平洋戦争中は国策による統廃合や、多くの酒蔵が原料不足による休業を余儀なくされる中を、一度も休造することなく製造し続けた全国唯一の酒蔵である。
昭和27年、関原酒造から経営権を買い取り、敷島酒造は名実ともに梁瀬家の酒蔵となる。
その後、明治から大正の最盛期には10軒ほどあった酒蔵も次第に減少し、昭和45年に朝日酒造がその暖簾を下ろしたことで、敷島酒造が釧路唯一の酒蔵となった。
平成3年(1991年)7月、会社組織変更と同時に社名変更し福司酒造株式会社として現在に至る。
福司とは、、、
福司という銘柄名は、設立時に酒造りの指南を受けた新潟の「関原酒造」から受け継いだものだが、日本古来の縁起の特徴「福(幸)を司る」すなわち「福を招く・幸を呼ぶ酒」との願いを込めて命名されたという。
福司を呑んで、幸せな気分にひたろうではないか!
福司酒造の特徴
寒仕込み
仕込みの期間は10月下旬から4月下旬まで。全量が「寒仕込み」だ。
釧路の冬はマイナス10℃を下回る。しかし酒蔵内は5℃を下回ることはなく、これは低温長期発酵に最適な温度が自然に保たれる環境にあるということ。
一方、夏はというと寒流「親潮」の影響でひんやりと涼しい。これは低温貯蔵にピッタリな環境なのだ。
このように、酒造りにとっての好条件が年間を通じて整っているという、うらやましい気候なのである。
仕込み水
発酵過程に大きな影響を及ぼす「仕込み水」も気候とともにこの土地に依存する要素なのだが、福司酒造の仕込み水は阿寒岳の雪解け水や屈斜路湖を水源とする釧路川やその流域に広がる釧路湿原の伏流水。
火山性地質や有機物の豊富な地質など通り大自然の中でゆっくりと濾過された伏流水は、酒蔵の近くにある専用の井戸からくみ上げて使用している。
この水なくして福司はないといっても過言ではない。
手造り
福司酒造は、自動醪圧搾機など一部機械化はしているものの文字通り「手造り」の仕事が多くを占める。
手造りというと「丁寧に造っている」というイメージだが、当たり外れというか、年によって、あるいはタンクによって、酒質が大きく異なってしまう要因ともなりえる。失敗酒も発生させてしまうわけだ。
それだけに、科学的に裏づけされた確かな技術を習得した蔵人の存在なしには「手造り」工程は成り立たないのである。
ここ10年の福司酒造は、全国新酒鑑評会において常連蔵と言われるほどの品質を維持し続けている。これが技術の高さを裏付ける何よりの証拠であろう。
主な商品の紹介
海底力(そこぢから) 大吟醸
「釧路の酒を!」という思いから誕生した「海底力」は、石炭採掘会社の釧路コールマインが保有する海底炭鉱の坑道で、1年近くかけて貯蔵した酒だ。
海底の坑道であるがゆえに気温の影響を受けること無く貯蔵され熟成が進む。そのため、味わいが軟らかに、まろやかに仕上がっている。
味わいは、やや辛口。熟成されて華やかな香りと芳醇な飲み口が特徴。
きたしずく | 日本酒度 +0.5 |
精米歩合 55% | 酸度 1.4 |
アルコール度 15~16 |
現在、入手困難です”
福司 純米酒
香りは非常に穏やか。フルーティとは言い難いが高級アルコールのかすかな芳香あり。
口に含むと、かすかな甘さを感じ、そこから米の旨味がほんのりと現れるがすぐに辛味へと変化する。
最後もスパッとキレるため、より癖を感じさせないスッキリした印象を残す。
飲み飽きしない、いわゆる淡麗辛口な食中酒と言えよう。
ガツンとしたゴツイ酒や、米に旨味を十分に味わいたい人には物足りなさを感じるだろう。
吟風 | 日本酒度 +4 |
精米歩合 60% | 酸度 1.5 |
純米酒 | アルコール度 14~15 |