青森県と秋田県の県境にある十和田湖から流れ出し、八甲田山系の雪解け水を合流しながら東へと流れ太平洋へと注ぎ込む「奥入瀬川」。地元では「百石川」と称された。

その百石川の河口から川沿いに3kmほどの内陸部に入った上明堂の集落に、今回ご紹介する酒蔵「桃川」がある。

桃川の創業と歴史

創業

1824年というから幕末の、勝海舟が生まれた頃である。百石村の庄屋「三浦家」が、五戸村で酒の製造を始め、皇女和宮様が生まれた1846年、五戸村から百石村(現在地)に移転。

大日本帝国憲法が公布された1889年。八戸の呉服商「村井家」が三浦家から酒造権や土地建物を買収し、「村井酒造」を設立。酒造業を開始する。これが「桃川」の創業である。

二北酒造

その後、村井酒造は会社組織になり石数を伸ばすも、国家による統制が入り、ついに昭和19年に二北酒造株式会社を設立し、管内の13の酒造場が統合された。

村井酒造も製造部門を二北酒造に統合させ、販売部門だけが残った村井酒造は酒類卸売業に転換した。

といえ、二上酒造株式会社の代表取締役は村井幸吉。実質的には村井酒造を中心とした統合であったということだろう。

さてこのとき、13の酒造場が二北酒造に統合され、次の5つの工場に分散された。

  • 百石工場
  • 三本木工場
  • 七戸工場
  • 野辺地工場
  • 田名部工場

桃川株式会社の誕生

この5工場体制で酒造りを行ってきた二北酒造であったが、百石工場以外の4工場が、昭和59年に独立することになる。それぞれ、、、

  • 三本木工場>>>鳩正宗
  • 七戸工場>>>十和田正宗>>>廃業
  • 野辺地工場>>>睦鶴>>>廃業
  • 田名部工場>>>関乃井

このようにして二北酒造株式会社には百石工場だけが残り、翌年の昭和60年に二北酒造株式会社百石工場は桃川株式会社に改名。これが、桃川の「第二の創業」ということになろう。

青森を代表する銘柄へ

平成3年、「特選街」の本醸造部門で第一位となる。同じ青森の田酒も、昭和56年「特選街」で日本一になったことをきっかけに全国区に躍り出たのと同じように、桃川も広く世間に知られるようになる。

それから3年後の平成6年、全国新酒鑑評会で金賞を受賞。それ以降、様々な鑑評会やコンクールで受賞を重ね、西田酒造とともに、青森を代表する銘柄の一つとして日本酒愛好家の支持を集めるようになり、青森最大の酒造メーカーに成長した。

平成23年にアジアマーケットへの進出をもくろみ韓国資本の傘下に入るも、平成26年に白鶴酒造の100%子会社となった。その後も青森の地酒メーカーとして独自の酒造りを繰り広げている。

桃川の特徴

「水」

古来より、酒造りは、その土地の米と自然環境を鑑みて、もっとも酒造りに適した場所が選ばれてきた。

その自然環境の第一は「水」である。酒造りには、酒造りに適した水が大量に必要。そのような土地を探さなければならない。

桃川は、八甲田山系に降る雨や雪解け水を湛える「十和田湖」を水源とする清冽な奥入瀬川のほとりにある。地下250Mからくみ上げた奥入瀬川水系の伏流水が仕込み水となる。

ここの水は軟水らしい。軟水系の水から醸し出される酒はきめ細かくまろやかな口当たりの酒になるといわれている。

「米」

主な原料米は、一般酒には青森県産米の「まっしぐら」、特定名称酒には山田錦・五百万石のほかに青森の酒造好適米「華想い」を使用している。

特に、酒造好適米の最高峰「山田錦」は、より優良な原料米を供給してもらうために、毎年地元兵庫の生産者と意見交換をしているという。

華想い

青森県で開発された酒造好適米。山田錦と花吹雪の交配だ。

玄米は大粒で、点状もしくは線状に心白が発現する、高精白が可能な米である。大吟醸に適している。

できる酒は香味のバランスよく、山田錦に匹敵する酒造特性を持つという。

ただし、障害型耐冷性が「中」、いもち病抵抗性が「弱」なので、気象・土壌条件の良好な地域に作付けを限定しなければならない米なので、実質的には契約栽培の形をとっている。

主な商品の紹介

桃川 大吟醸純米

酒造好適米の最高峰「山田錦」を35%まで磨き、南部杜氏と一級酒造技能士の匠の技が醸し出した大吟醸酒。

全国新酒鑑評会出品酒と同じクラスのモロミを低加圧で搾った大吟醸酒を低温貯蔵で熟成。

上品で豊かな香り、まろやかで奥深い甘みのある味わいはまさに最高級品でありながら、高いコストパフォーマンスを目指した逸品である。

山田錦 日本酒度 +3
精米歩合 35% 酸度 1.3
純米大吟醸 アルコール度 16

 

桃川 大吟醸純米 華想い

青森県産酒造好適米「華想い」と、その旨さを引き出す青森県開発酵母「まほろば吟」を使用し、青森の厳しい寒さの中で仕込み低温発酵で造った、青森の青森による青森のための大吟醸純米。

華やかな上立ち香。口に含むと、米の旨みが十分に引き出されたふくらみのある味わいと豊かな含み香が調和して広がります。

華想い 日本酒度 +3
精米歩合 45% 酸度 1.4
純米大吟醸 アルコール度 15~16

 

 

桃川 純米酒

香りは穏やかだが、かすかにメロン様の香り。甘みと酸のバランスは若干酸が勝つ。あくまでも甘みと酸味を比較したらという話であって、いずれにしても淡麗なやや辛口といったところか。

スルスルと飲める日常用の酒である。

国産米 日本酒度 +2
精米歩合 65% 酸度 1.4
純米酒 アルコール度 15~16