曲イ田中酒造(カネイタナカ)は、北海道小樽市にある酒造メーカー。代表的な銘柄は「宝川」。
ここ10年の全国新酒鑑評会における入賞回数が、大雪乃蔵と並んで北海道の蔵でトップを誇る9回と、人気実力ともの北海道のトップクラスの酒蔵である。
その大躍進の源は、北海道の大地の恵みもさることながら、ユニークな経営方針による造り手の成長に他ならないと思うのである。
目次
創業と歴史
創業は明治32年。岐阜県大垣から小樽にやってきた田中市太郎さんが、色内川が海へ注がれる河口付近で、造り酒屋を営んだのが始まりと聞く。
昭和18年には、戦時体制のもと酒造部門は国の統制によって小樽合同酒造株式会社に集約され、田中酒造は販売部門のみで営業を続けることとなったらしい。
終戦後の1950年代から再び製造を始め、1956年に田中酒造株式会社を設立。
1988年。3代目社長の体調の悪化に伴い、銀行に勤めていたご子息「田中一良さん」が実家に戻って4代目として社長を継ぐこととなる。就任するやいなや、数々のユニークな施策で会社を盛り上げていく。
その手腕に乗っかった従業員の志気も高く、酒造りに没頭する毎日を送っているという。
田中酒造のこだわり、、、
四季醸造
冬の寒い時期に、その気温を利用して低温長期発酵させるのが酒の品質にとって良いとされる。なので、「酒は寒造りでなきゃね」などと言われる。
大手の酒造メーカーは冬季の醸造だけでは石数が確保できないので、クーラーやサーマルタンクの導入で1年通して醸造できる四季蔵を建造して対応した。
田中酒造は年間500石。大手メーカーの石数はというと、白鶴で30万石ぐらいか。なんと500分の一の石数しかない。なのに四季醸造とは何故に?
それは、小樽の冷涼な気温に四季醸造の可能性を見出したことに加えて、次のような利点があるという。
- 小タンクによる仕込みとなるため、手間暇かけた管理が可能となる。
- 蔵人を年間雇用することが出来る。
- 一年中、酒を仕込むことが出来る。
これらから導き出される答えは、「蔵人さんたちの醸造技術の向上」に他ならない。
原料米は道産米100%・造る酒は純米のみ
現在、北海道の多くの酒蔵が道産の酒造好適米を使用した酒造りを行うようになっているが、大吟醸クラスともなると山田錦を使う酒蔵が多い。
そんな中、ここ田中酒造さんはすべての酒を道産米で仕込んでいる。「もちろん山田錦や雄町と比較すると今でも劣る部分はある」と杜氏さんは言う。
しかし、道産米にこだわり、特性を知り尽くし、道産米で旨い酒を造ることが、道産子の気概性なのだ。
だからこそ、すべての商品を「純米」で勝負をかける。
仕込み水
1995年。小樽市街のちょうど真ん中あたり勝納川の河口付近に製造場を新築。「亀甲蔵」と名付けた。
この亀甲蔵の地下には、小樽のシンボル山ともいえる「天狗山」の雪解け水が、長い年月をかけてミネラルを吸収しながら、ゆっくりゆっくり流れくる。
カリウム・リン・マグネシウムが豊富に含まれ、鉄分が少ない、いわゆる酒造りに適した水なのだそうだ。
もしかしたら、海のそばだから「灘の宮水」のように塩分も適度に含まれているかもしれない。
ちなみに、天狗山には天狗神社が鎮座する。祭神は「猿田彦命」。猿田彦命は「導きの神」としての神格を待ち、鼻が高く赤ら顔。天狗のモデルとなった神だ。
主な商品の紹介
純米大吟醸 宝川
「純米大吟醸 宝川」はニセコ町産の酒造好適米「きたしずく」を40%まで磨き上げ醸した贅沢なお酒。
果実のような甘い香りと上品な深い味わいが特長。
【原料米 】ニセコ町産酒造好適米「きたしずく」100%
【日本酒度 】 +1
【アルコール分】 16%
【精米歩合 】 40%
純米吟醸酒 おたる 春香(はるか)
北海道産酒造好適米『彗星』を60%まで削り、良質な伏流水で仕込んだ花々を思わせる華やかな香りと、春風のようなフレッシュな味わいが特長の純米吟醸酒。
酸味と甘みのバランスも絶妙で、常温または冷やしてお召し上がりいただくのがおすすめ。
【原料米 】 北海道産酒造好適米『彗星』100%
【日本酒度 】 +1
【アルコール分】 15%
【精米歩合 】 60%
純米吟醸原酒 宝川 720ml
北海道産酒造好適米を60%まで削り良質な伏流水で仕込んだ純米吟醸の原酒。
華やかな吟醸香としっかりとした口当たりが特徴の芳醇辛口酒。
純米吟醸原酒 宝川は水を加えないため、お酒が出来たそのままの香りや味わいが感じられる逸品。
ラベルは昭和初期に実際に使用していた物を再現して復刻。
【原料米 】 北海道産酒造好適米100%
【日本酒度 】 +1~+3
【アルコール分】 17%
【精米歩合 】 60%